様似町で「ざっぱ魚」の市場価値向上、完全放牧の肉牛生産に出会いました!


2014年秋号は様似町に伺いました。

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今まで市場でも1㌔30円でしか取引されていなかった「ケツブ」の美味しい食べ方を考案し今までの3倍以上の市場価格に引き上げたり、サメのぬた、トウベツカジカの桜でんぶなど、市場価値のがなく網にかかっても廃棄されるような魚「ざっぱ魚」の有効活用に日高地区漁協女性部連絡協議会の皆さんが取り組んでいました。

また、完全放牧野生牛、ジビーフと呼ばれ、首都圏、関西のシェフ、食肉会社が注目する畜産家の西川奈緒子さんの取組も取材させていただきました。

真つぶになりたくて?

様似町はコンブ、サケ、マツブの産地ですが、市場に流通せずに捨てられたり、漁師さんの食卓だけにお目見えしたりする珍しい魚介類がたくさんいます。日高地区漁協女性部連絡協議会の皆さんが、新しい食資源として活用に取り組んでいると聞き、現地を訪ねてきました。
「真つぶになりたくて」という面白い名前の料理があります。ひだか漁協厚賀地区女性部長の星野重子さんの創作料理です。ケツブ(アヤボラ)という貝を使います。カレイなどの刺し網漁で使うカゴに入ることが多いのですが、殻に短い毛のようなものが生えており、独特の臭いもするので、以前は1㌔当たり30円程度の値段しか付きませんでした。
星野さんは、殻を外して水洗いした身を沸騰したお湯でゆで、塩もみと水洗いを3~4回も繰り返して臭いを消しました。こんにゃく、ちくわ、タケノコ、長ネギと一緒に一口大に切りそろえ、酒、しょうゆ、みりんで5分ほど煮込み、一晩かけて味をなじませます。真ツブの殻に盛り付けることで、真ツブそっくりの見た目と食感に仕上げました。
ゆでたケツブを酒、しょうゆ、砂糖、おろし生姜で味付けし、5分ほど煮込んでから一晩漬け込み、串を通した「ケツブのかんざし」は、同漁協門別地区女性部長の関口あきさんが創作しました。地域のお祭りでも大人気で、今ではセブンイレブンで売っているおでんの具にも採用されています。地元の女性たちがおいしい食べ方を見出したケツブは、今では市場で1㌔当たり100円以上の値段が付くこともあるそうです。

サメやカジカもおいしく活用

アブラツノザメのヌタを提案したのは、えりも漁協近笛地区女性部の岩間みちさん。サメ独特のアンモニア臭が嫌われ、市場価値はほとんど無いのですが、サメの中では最もクセが無く、身はしっとりとしていて味も良いのが魅力です。身を薄切りにして、1時間ほど酢に浸してから、みそ、砂糖、長ネギと混ぜ合わせます。酢でしめても硬くならず、しっとりとした食感はそのままです。
様似町では、運動会や端午の節句にトウベツカジカの〝桜でんぶ〟を使い、ちらし寿司やいなり寿司を作る習慣がありました。最近では作る人も減りましたが、住岡操さん(日高地区漁協女性部連絡協議会長)が復活を目指しています。トゲが漁網を傷めるので、浜では嫌われ者ですが、水分が少なく桜でんぶには最適です。三枚におろした身をゆで、水を2~3回取り替えて脂を抜き、小骨を取り除きます。鍋でほぐしながら砂糖、塩、酒で味を整え、食紅で色を着け、パラパラになるまで炒めます。素朴な食感が魅力です。
協議会ではムイ、ヤマノカミ、タコマンマなど、15種類の魚介類を使った30種類のオリジナル料理を「日高の埋もれた食材」として、日高振興局のホームページで紹介しています。住岡会長は「漁業に携わる私たち自身も、市場価値の無い魚は『ざっぱ魚』と呼び、活用には消極的でした。自分たちの手で活用方法を考え、食品業界や消費者に情報を発信することで漁業や観光の振興につなげたい」と話してくれました。
一方で様似特産のコンブは化学調味料に押されて消費が低迷しています。日本昆布協会の「昆布大使を務める一般社団法人北海道水産物検査協会浦河検査事務所の荒井孝幸所長代理は、簡単な活用法として「焙煎昆布の作り方を提案しています。乾燥昆布を2㌢×1㌢角に切り、フライパンで焦がさないよう10分ほど乾いりします。表面がぷくっと膨れてきたら出来上がり。おやつに最適で、フードプロセッサーで砕くと昆布茶、塩を加えると昆布塩にもなります。

完全放牧の肉牛生産に挑戦

様似町では、酪農家の西川奈緒子さんが「完全放牧野生牛」や「ジビーフと呼ばれる牛を育てています。
国産肉牛は、脂肪の多い霜降り肉にするため、トウモロコシなど穀物中心の濃厚飼料を与え、出荷するまで牛舎で飼育します。獣医師でもある西川さんは「現代日本の肉牛生産は、肉を霜降りにするため、ビタミンの投与を抑え、狭いゲージで運動をさせないなど、ある意味では異常な飼育を続けてきた」と考えています。BSEや口蹄疫の影響で始まった牛肉離れや飼料価格の高騰で、肉牛農家の経営は危機的な状況にあります。西川さんは「肉牛生産を根本から見直し、出産から出荷に至るまでの全期間を放牧にして、濃厚飼料も与えないという前代未聞の肉牛生産で勝負したいと考えました。
黒毛和種やホルスタインは、濃厚飼料を主食とする品種として育成されてきたので、草だけを食べているとやせてしまいます。何世代にもわたり人間のサポートで出産し、出産後はすぐ親子を引き離してきたので子育ても苦手です。西川さんは平成23年、草だけで十分に栄養を得られる胃を持ち、子牛を守るため、飼い主や熊にも立ち向かうほど気性が強いアンガス牛を9頭導入しました。
牛は暑さに弱いので、日陰がある約200㌶の林で放牧を行っています。ササやフキ、ヨモギを食べて成長し、熊から身を守るため群れで行動します。大雨や雪の日、母牛が出産する時は谷に身を寄せます。十分に運動しているので難産もなく、病気にかかることも無いそうです。
西川さんが育てた牛肉の格付けは最低ランクのC‒1ですが、この挑戦に食肉業者や東京のシェフが注目しています。昨年は37人が様似を訪れ「黄色い脂身は鴨、肉質は野生の鹿肉に近い。牛肉とは思えない驚きの味だ」「草の風味が独特。何枚食べても胃もたれしない」と絶賛されました。今では関西の食肉会社が全量を買い取り、直販サイトや東京の一流店で扱っていますが、口コミで話題が広がり、入手困難な状況です。「理解者を得てとても心強い。今後も自然保護や食の安全に徹する生産者が報われない社会に一石を投じたい」と西川さんは決意を込めます。
様似町では、市場価値の無い魚介類の活用に取り組む女性たち、前例の無い肉牛の完全放牧にチャレンジする酪農家に出会い、食材に真剣に向き合う姿勢に感動しました。

 

 

 

 

 

 

miyan33 について

木村 光江(みーやん)bambic.バンビック代表 北海道フードマイスターとして地産を活用したクッキング講師として活動の場を広げているみーやんです。 ・北海道らしい食づくり名人・野菜ソムリエ・雑穀エキスパート・日本デコ巻きずし協会 北海道支部代表 料理講師、レシピ開発、商品アドバイザー業務、食育講座の企画&協力、市町村のイベント司会/MCなどの仕事をしています。

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